2017年度私的ドラマエミー賞
今年はようやく大中流社会と思われてきたドラマ世界(昨年の「逃げ恥」なんかソレ)のニッポンも2つの断層に分けられはじめたような気がした。
マキマキにとっての昔いた世界、それは幼少期富山にいた頃…おっとネタバレか、とにかくあらゆる手段を使って向こう岸に逃げなければならない理由がある世界であり、そしてここに理由があるから住まなければならないディストピアと住みたかった軽井沢にある別府家の別荘ことユートピアをそれぞれ行ったり来たりするゆらぎに私は酔いしれながら真冬の軽井沢の会話劇を楽しんだ。
2つの世界がある事を知った私は、ユートピアやディストピアができる前(と思い込んでいる)1960年代の奥茨城と向島と赤坂の田舎道・乙女寮・すずふり亭の住人に化けて半年ほど慌ただしい世界から逃げ込んだ、そう川本世津子のように。しかしドラマは家族みんなで歌自慢がエンディングを迎えるか如く終わってしまう。さてさてどうすんべな。
ならユートピアとはどんなトコなんだろ?と「100万円の女たち」を見始める、黙っていても月500万が訳あり女たちから転がりこんで小説を書いていれば済むいい身分だ…まあそんな事にはならない運命だし運命だったが。そしてドラマを見終えた後気づくだろう「金持ちおっかねぇ~」と。
そういう時は平々凡々がなりよりと都内に住む某OL日記から日常に帰ろうとする。他愛のない事件、他愛のない上司のハゲ面の悪口、他愛のない小峰様の大スペクタクルハロゲンヒーター購入とか。でもあっけなく気づくだろう「あれアイツ升野じゃね?」そして世界は消滅する。
気づいたら下北沢のバーで法螺話に興じる戯作家とバーのママの姿が、ある時はトランクの中に潜む全裸の政治家、またある時は指に瓶が刺さった男に巻き起こるアクション、そしてある時は悪魔と契約してでも売れたいと願うロッカーと緑色のゲロを吐いちゃうリードボーカルの女の物語とか。そして「あれ今いるのはこっち岸か?それとも向こう岸なのか?」と、それがドラマの醍醐味。
現実にいる私たちにある両岸は「地上波(TVer)」と「ネット配信(Netflixとhulu)」の見る側の世界だ。ゴールデン帯は「逃げ恥」の成功と共に瞬く間にTVer配信がデフォとされ、現在では「地上波オンリー」を貫けるのは「相棒」などの東映系刑事物程度になってしまった。そしてNHKより「火花」が巻き起こったネット配信ドラマの炎はこれも瞬く間に日テレ・フジテレビ・テレビ東京などの深夜ドラマに飛び火し、現在では視聴率と無関係に必要な本数が揃えられる30分ドラマが来年以降からメインストリームになる気配すらある。そして地上波オンリーの岸からネット配信オンリーの岸へと金と時間のある連中(特に海外ドラマフリーク)から泳ぎ出している。
「さてどうするのかな?」と洞ヶ峠を決め込んではみたが、いつの間にか手は向こう岸に向けてもがいている最中。まあ地上波オンリーで決め込んでるのは「科捜研の女」ぐらいだし、お年寄りたちのキラーコンテンツ「ドクターX」も今シリーズからTVer入りしたから自然と向こう岸に泳ぎ出すわなと。そしてどれぐらいの時間・距離で泳ぎもがけばいいかわからない。ドーナツホール号が進むべき長い道のりかもしれないし、単純に下北沢から代々木上原までかもしれないし…と思いながら知らぬ間に奥茨城の実家でグーグー寝ているみね子であった。というオチ。
NHK土曜ドラマ「植木等とのぼせもん」オリジナル・サウンドトラック&明るい昭和の音楽集
- アーティスト: TVサントラ,小松政夫,相田毅,多田尋潔,宮川泰
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2017/10/11
- メディア: CD
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・架空OL日記(YTV(hulu)・4月期)
・カルテット(TBS・1月期):◎○▲△脚
・下北沢ダイハード(テレ東・7月期)
・ハロー張りネズミ(TBS・7月期)
・100万円の女たち(テレ東(Netflix)・4月期):演
・ぼくは麻理のなか(フジ(Netflix)・10月期)
・わにとかげぎす(TBS・7月期)
(◎:作品 ●:主演男優 ○:主演女優 ▲:助演男優 △:助演女優 脚:脚本 演:演出)
(山田孝之は「山田孝之のカンヌ映画祭」。宮崎あおいと長塚京三は「眩〜北斎の娘〜」。冨士眞奈美は「やすらぎの郷」。入江悠は「SRサイタマノラッパー〜マイクの細道〜」でのノミネート)
・今年の主題歌:コトリンゴ「漂う感情」(100万円の女たちテーマ曲)
2017年私的購読マンガベスト10
・第十位…バイオレンスアクション(ビックコミックススペシャル):(今年の「惜しかった」1本目のアレとこの作品(2巻1本目のエピソード終盤見開き)での主人公の目をつい比較しちゃうと…)
バイオレンスアクション(1) (ビッグコミックススペシャル)
- 作者: 浅井蓮次,沢田新
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2017/03/24
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・第九位…それでも町は廻っている(ヤングキングコミックス)※完結:(連載中心で読んでいたので、あの単行本オンリーのエピソードは不意をつかれた)
・第八位…3月のライオン(ヤングアニマルコミックス):(あの対局の数ページ後であの人中心のストーリーだったために「とうとう…」と一瞬だけ身構えた。まだ先であってね)
・第七位…プリニウス(パンチコミックス):(ローマのおやじを描かせたら世界一のヤマザキ先生の新作のおやじは最高。そしてあのおやじが今後の重要なキーマンですぞ)
・第六位…ランド(モーニングコミックス):(2つの「ニッポン」を慎重に進めている最中。「へうげもの」連載終了以降モーニングはこれしか読まないだろうな)
・第五位…ポーの一族 春の夢(フラワーコミックススペシャル):(正直大作の続編だとそのファンの「# NETSU」が得てしてジャマをするんだよなと思ったものだが、結局単体でも面白い作品だった)
・第四位…ど根性ガエルの娘(ヤングアニマルコミックス):(上半期「スゴイ!」も「読め!」も上位間違い無しと思ったものだが、絶賛した人はどこに行ったのやら)
・第三位…双亡亭壊すべし(少年サンデーコミックス):(来月発売予定の7巻が1つのピークになるのかな?次のピークのためにもここで盛り上がってほしいな(ベストテン発表前日に6巻まとめ読みした人))
・第二位…さよなら私のクラマー(月刊少年マガジンコミックス):(グワングワン風呂敷を広げまくり中。4巻の最後ヌッと現れた彼女は最高、そしてアレっぷりも最高。もちろん少女サッカーマンガとしても最高)
・第一位…君に届け(マーガレットコミックス)※完結:(今後高校3年の春夏秋冬を丁寧に描ききれた作品は少子化により現れない運命になるだろうから、作品自体の評価と共にその少女恋愛成長マンガの輝かしき末尾として第1位にした)
2017年私的購読マンガベスト10-外伝-
○その1 来年もより楽しめそうな作品(ベスト10作品を除く)
・血の轍(ビックコミックス)
・こいいじ(Kissコミックス)
・サトコとナダ(星海社コミックス)
・1122(モーニングコミックス)
・甘木唯子のツノと愛(ビームコミックス)
○その2 20167年世間の荒波に負けずに無事完結した名作たち
・月影ベイベ(フラワーコミックスアルファ)
・フイチン再見!(ビックコミックス)
・へうげもの(モーニングコミックス)
○その3 今年「惜しかった」作品
・世界で一番、俺が◯◯(イブニングKC):水城せとな作品は原則としてみんな買いの作品ばかりだが、どうもこの最新作だけは…主要人物のナナミ(エージェント773号)感情を意図的に消しまくっているせいでどうも感情移入が…。そういうのが逆に好きな人もいるんだろうな。
・LIMBO THE KING(ITANコミックス):デビュー作から全作集めている田中相先生のハードボイルドSFアクション作品。本当に難儀な精神世界の描写は素晴らしいが、いかんせん隔月から毎月発行になったとはいえ「ITAN」ペースではいつ全容がわかるのか先の話になってしまいそうで、できれば良作の短編集を…。
・疾風の勇人(モーニングKC):こちらは単純明快「なぜ終わらせた!?」。
○その4 今年ワースト作品
・「フリースタイル」37号(THE BEST MANGA 2018 このマンガを読め!)
・受賞理由:毎年あきれた作品・くだらない雑誌に(小声で)消極的にさしあげる悪名高き賞(であってほしい程怒り狂う理由がある)。2010年度のイヤーブック(1位が「この世界の片隅に」)から買い続けているので、あまり口悪く罵りたくはないが、この3冊からくる連想ゲームでその理由を察してください。ふざけんなよまったく。